タイの子供服古着はブルーオーシャンか?市場規模と将来性を徹底分析

執筆者:山田雄介(アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント)


サワディークラップ!バンコク在住14年のアジア古着市場アナリスト、山田です。

「タイの古着ビジネスは儲かる」という話はよく聞きますが、「子供服」に絞った市場はどうなのでしょうか?実は、こちらでは多くの人が見過ごしている大きな可能性があります。

しかし、少子化が進むタイで本当にビジネスは成り立つのか?現地の親は何を求めているのか?この記事では、元商社マンとしての貿易知識と、タイで2人の子を育てる父親としてのリアルな視点から、タイ子供服古着市場の規模、将来性、そして成功の秘訣を徹底分析します。巷のガイドブックにはない「生きた情報」で、あなたのビジネスの疑問に全てお答えします。

なぜ今「タイの子供服古着」なのか?市場の現状とポテンシャル

タイがアジアの古着ハブである理由

タイが「アジアの古着ハブ」と呼ばれるのには明確な理由があります。日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界中からコンテナ単位で大量の古着がここに集積され、選別・加工された後、再び近隣諸国へと輸出されていくのです。

その一大拠点が、カンボジア国境に位置する巨大な「ロンクルア市場」でした。ここはいわば、アジア中の古着の源流。世界中から集まった古着がここでベール(圧縮梱包された塊)のまま取引され、タイ全土、そしてマレーシアやベトナムへと流れていきます。この巨大な流通網があるからこそ、多種多様な子供服古着を安定的に見つけることが可能なのです。

ただし、注意点もあります。2025年後半から国境付近の情勢が不安定化し、ロンクルア市場が一時的に閉鎖される事態も発生しています。 このような地政学リスクは常に存在しますが、物流ハブとしてのタイの優位性は揺らいでおらず、バンコク近郊や地方都市にも有力なサプライヤーは数多く存在します。元商社マンの視点から見ても、この物流インフラは大きな魅力です。

参考: 【重要】ロンクルア市場閉鎖に伴う仕入れ・今後の対応について

子供服に特化するメリット:見過ごされたニッチ市場

一般的なTシャツやデニムを扱う古着ビジネスは、すでに多くのプレイヤーが参入しており、価格競争も激化しています。しかし、「子供服」というニッチな分野に目を向けると、状況は一変します。

子供服ビジネスには、以下のような大きなメリットがあります。

  • 継続的な需要: 子供はすぐに成長するため、服はあっという間にサイズアウトします。これはつまり、常に新しい服への需要が生まれ続けるということです。
  • 高い利益率: 大人の古着と違い、子供服は「一点物」のデザイン性や可愛らしさが重視される傾向にあります。そのため、状態の良いブランド品やデザイン性の高いアイテムは、仕入れ値に対して高い価格設定が可能です。
  • 競合の少なさ: 大人の古着に比べて専門的に扱う業者が少なく、まさに「ブルーオーシャン」と言える市場です。

実際にチャトゥチャック市場で子供服を専門に扱う業者に話を聞いても、「大人の服より回転が速く、リピーターもつきやすい」と語っていました。この見過ごされた市場にこそ、大きなビジネスチャンスが眠っているのです。

サステナブル意識の高まりとリユース文化の浸透

世界的なSDGsの流れは、ここタイの消費者意識にも確実に変化をもたらしています。特に、教育水準の高い都市部の中間層や若い親世代を中心に、「環境に配慮した消費」への関心が高まっています。

私の妻の友人たちとの会話でも、「子供には良いものを着せたいけど、すぐに着られなくなる服を新品で買い続けるのはもったいない」「質の良い古着を選ぶ方が賢い選択」といった声がよく聞かれます。これは、単なる節約志向ではなく、サステナビリティを重視する価値観の表れです。

また、近年は日系のリユースショップがバンコク市内に続々とオープンし、タイの人々にとって中古品を購入することへの心理的なハードルが下がっています。このような社会全体の変化が、子供服古着市場の成長を力強く後押ししているのです。

【データで見る】タイ子供服市場の規模と将来性

タイのアパレル・リユース市場規模の現状

まず、大きな視点から市場を見てみましょう。タイのリユース市場は、アジアの中でも特に成長が著しい市場の一つです。 Roland Berger社の分析によると、タイの消費者はオンラインでの購入に非常に積極的で、「毎週オンラインで何らかの商品・サービスを購入する」と回答した消費者の割合は69%と世界トップクラスです。 この活発な消費活動が、リユース市場全体の成長を牽引しています。

参考: リユース市場の成長と構造変化

アパレル分野に絞ると、タイのEC市場は東南アジアでインドネシアに次ぐ規模を誇り、急成長を続けています。 特にファッションカテゴリはEC市場の主要分野であり、この大きな流れの中に子供服市場も含まれています。

私の取引先である大手卸売業者も、「ここ数年、特にオンライン販売業者からの子供服の引き合いが明らかに増えている」と話しており、現場レベルでも市場の拡大を肌で感じています。

懸念点:タイの少子化はビジネスにどう影響するか?

ここで必ず指摘されるのが、タイの深刻な少子化問題です。マヒドン大学の発表によると、タイの合計特殊出生率は2024年に1.0まで低下し、日本の1.2をも下回る水準となっています。 2025年の予測ではさらに低下し、0.86という数字も出ています。

「子供の数が減るのに、子供服ビジネスが成り立つのか?」これはもっともな懸念です。しかし、私はこの逆風をチャンスと捉えています。なぜなら、「子供一人にかける金額が増加している」からです。

私の周りのタイ人の親たちを見ても、教育熱心な家庭が非常に多く、子供の習い事や衣類にかけるお金を惜しみません。数が少ないからこそ、一人ひとりに高品質でデザイン性の良いものを与えたいという親心は、万国共通です。安価な量産品ではなく、品質やデザインで選ばれる付加価値の高い古着にとっては、むしろ追い風となる可能性があるのです。

将来性の鍵:中間層の拡大とEC市場の成長

タイ経済は、一部で成長の鈍化が予測されているものの、中長期的には堅調な成長が見込まれています。 経済成長に伴い、購買力の高い中間所得層が拡大しており、これが子供服への支出を押し上げる大きな要因となります。

そして、もう一つの重要な鍵がEC市場の爆発的な成長です。 タイではShopeeやLazadaといったECプラットフォームに加え、FacebookやTikTokなどのSNSを通じた「ソーシャルコマース」が非常に盛んです。

プラットフォーム特徴子供服販売との親和性
Shopee / Lazada大手ECモール。集客力が高い。幅広い層にアプローチ可能。セール時期に売上が伸びやすい。
Facebookライブコマースが盛ん。コミュニティ形成に強い。商品の魅力を動画で伝えやすい。顧客との関係構築に最適。
Instagramビジュアル重視。ブランディングに強い。コーディネート提案など、世界観を伝えやすい。
TikTok短尺動画が人気。若年層に強い影響力。着用動画などで商品の可愛らしさを伝えやすい。

これらのプラットフォームを活用することで、実店舗を持たなくてもタイ全土、さらには海外の顧客にも商品を届けることが可能です。このEC市場のダイナミズムこそが、タイ子供服古着ビジネスの将来性を担保する最大の要因だと、私は分析しています。

【現地パパが徹底解説】タイの親が本当に求める子供服とは?

所得層別に見る子供服への価値観の違い

バンコクで14年間生活し、2人の子供を育てていると、所得層によって子供服に求める価値が全く違うことがよく分かります。

  • 富裕層: 高級デパートで欧米のハイブランドの新品を購入する層です。古着市場のメインターゲットではありませんが、彼らが手放した状態の良いブランド古着は、中間層にとって非常に魅力的です。
  • 中間層: まさに、このビジネスの主戦場です。品質やデザイン性を重視し、子供には良いものを着せたいと考えています。しかし、常に新品のブランド品を買うのは負担が大きいため、状態の良いブランド古着や、デザイン性の高いノーブランド古着の需要が非常に高いです。SNSで情報を集め、オンラインでの購入にも積極的です。
  • 労働者層: 価格を最優先します。マーケットの露店などで、安価な古着をまとめ買いする層です。デザインよりも、とにかく安く枚数を揃えたいというニーズが中心です。

ビジネスとして利益を出すためには、購買力のある「中間層」をターゲットに、彼らが求める「品質・ブランド・デザイン」を意識した商品構成が不可欠です。

人気のスタイルとブランド:日本の「お下がり」は売れるのか?

タイの子供服のトレンドは多様化していますが、いくつかの特徴があります。

  • 定番の人気: アニメやキャラクターものの人気は絶大です。特に日本のキャラクターは広く浸透しています。また、女の子はフリルのついたピンクのドレス、男の子はヒーローもののプリントTシャツといった、分かりやすいデザインも根強い人気があります。
  • SNSの影響: InstagramやTikTokの影響で、日本のナチュラル系ファッションや、韓国風のくすみカラーを使ったシンプルなスタイルもおしゃれな親たちの間で人気が高まっています。
  • ブランド古着: Ralph Lauren、GAP、Carter’s、OshKoshといったアメリカの定番ブランドは、品質への信頼感から非常に人気があります。日本のMIKI HOUSEやfamiliarなども、その品質の高さから富裕層や日本人駐在員を中心に需要があります。

日本の「お下がり」は、デザインや状態が良ければ十分に売れます。特に、丁寧な作りで生地がしっかりしている日本の子供服は、タイの親たちからも高く評価されています。

気候と文化が生む独自のニーズ

タイで子供服を販売する上で、絶対に無視できないのが気候と文化です。

  • 気候: 年間を通して高温多湿なため、素材はコットン100%が基本です。通気性が良く、汗を吸う素材が好まれます。フリースなどの厚手の生地は、デパートなどの冷房対策用として多少の需要はありますが、メインにはなり得ません。
  • 学校文化: 多くの学校(特に私立)には制服があります。そのため、平日に着る私服よりも、週末や休日に着る「お出かけ用」の少しお洒落な服の需要が高い傾向にあります。
  • 宗教・冠婚葬祭: タイは敬虔な仏教国です。お寺へのお参りや、結婚式などの冠婚葬祭に出席する機会も多く、その際には肌の露出が少ない、少しフォーマルな服装が求められます。男の子なら襟付きのシャツやポロシャツ、女の子なら上品なワンピースなどが重宝されます。

こうした現地ならではのニーズを理解することが、売れる商品を見極める上で非常に重要です。

元商社マンが教える!タイ子供服古着ビジネス成功の5ステップ

ステップ1:コンセプト設計「誰に、何を、どう売るか」

ビジネスを始める前に、まずコンセプトを明確にすることが最も重要です。

  • 誰に: ターゲット顧客は誰ですか?(例:日本のナチュラル系ファッションが好きなママ、タイ在住の日本人、タイの中間層など)
  • 何を: どんな商品を扱いますか?(例:アメリカのブランド古着専門、日本のキャラクター古着、ヴィンテージのベビー服など)
  • どう売るか: 販売チャネルはどうしますか?(例:日本のECサイト、タイのShopee、Instagramでの販売など)

私のコンサルティング経験上、コンセプトが曖昧なまま「儲かりそうだから」と始めると、仕入れがブレてしまい、在庫を抱える原因になります。

ステップ2:仕入れルートの開拓【プロの交渉術】

仕入れはビジネスの生命線です。チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケットは有名ですが、プロはそこだけでは仕入れません。

  • ロンクルア市場: アジアの古着の源流ですが、前述の通り情勢が不安定になることがあります。渡航前には必ず最新情報の確認が必要です。
  • バンコク近郊・地方の倉庫: 大口の卸売業者は、郊外に巨大な倉庫を持っています。こうした業者と繋がることが、安定した仕入れの鍵です。
  • 業者との関係構築: タイのビジネスは「人と人との関係」が全てです。焦らず、何度か通って顔を覚えてもらいましょう。タイ語で挨拶(「サワディークラップ」)したり、簡単な世間話をしたりすることが、信頼関係に繋がります。価格交渉の際も、無理な値切りは禁物。「マイペンライ(気にしない、大丈夫)」の精神を理解し、お互いが気持ちよく取引できる着地点を探ることが大切です。

ステップ3:品質チェックと検品体制の構築

高温多湿なタイでは、商品の保管状態が非常に重要です。商社時代に叩き込まれた品質管理の視点は、古着ビジネスでもそのまま活かせます。

検品チェックリスト

  • [ ] シミ・黄ばみ: 特に首周り、脇、股の部分は念入りに。
  • [ ] 匂い: カビ臭さやタバコの匂いがないか。
  • [ ] 虫食い・穴: 小さな穴も見逃さない。
  • [ ] ボタン・付属品: ボタンやジッパーが壊れていないか、付属品が揃っているか。
  • [ ] プリントの劣化: ひび割れや剥がれがないか。

ベールで仕入れた場合、中には売り物にならない状態のものも必ず混じっています。それを見越した上で仕入れ価格を判断し、厳格な検品体制を構築することが、顧客の信頼を得る上で不可欠です。

ステップ4:輸出入手続きと関税の知識【完全ガイド】

タイから日本へ古着を輸出する場合、関税や法規制の知識は必須です。

  • 関税: 個人使用目的の少量であれば免税範囲に収まることもありますが、事業として輸入する場合は原則として関税がかかります。HSコード(商品を分類するための番号)によって税率が異なりますので、事前に税関のウェブサイトなどで確認が必要です。
  • インボイス: 輸出の際には、商品の内容、数量、価格を記載したインボイス(仕入書)が必要です。正確な情報を記載しないと、通関でトラブルの原因となります。
  • 輸送手段:
    • 航空便(クーリエ): DHL、FedExなど。速いがコストが高い。少量から始めたい場合に適しています。
    • 船便: コストは安いが時間がかかる。ある程度の物量がまとまってから利用するのが効率的です。

2026年1月からは、タイ政府が1バーツ以上の輸入品すべてに関税と付加価値税(VAT)を課す方針を発表しており、タイ国内への輸入販売を考える場合は注意が必要です。 このように貿易ルールは常に変わるため、最新の情報をキャッチアップし続けることが重要です。

参考: タイ政府は輸入品すべてに課税へ、2026年1月から1バーツ以上が対象

ステップ5:販売戦略とブランディング

仕入れた商品をどう売るか。オンライン販売が主流の今、ブランディングが成功を左右します。

  • SNSの活用: 商品をただ並べるだけでなく、着用モデルの写真を載せたり、タイの文化や仕入れのストーリーを発信したりすることで、ファンを作ることができます。
  • 付加価値: 「タイの職人が手染めした子供服」「一点物のヴィンテージベビー服」など、独自の付加価値をつけることで、価格競争から脱却できます。
  • 顧客とのコミュニケーション: InstagramのコメントやDMに丁寧に返信するなど、顧客との繋がりを大切にすることがリピーター獲得に繋がります。「ナムチャイ(思いやりの心)」を持って接することが、タイのビジネス文化にも通じる成功の秘訣です。

よくある質問(FAQ)

Q: タイの子供服古着ビジネスは、本当にブルーオーシャンと言えますか?

A: はい、可能性は非常に高いです。一般的な古着ビジネスに比べ競合が少なく、子供服特有の「サイズアウトによる継続的な需要」があります。ただし、成功するには現地のニーズを正確に捉え、品質管理を徹底することが不可欠です。本記事で解説した市場分析と実践的ノウハウがその鍵となります。

Q: 必要な初期費用はどのくらいですか?

A: 副業レベルで始めるなら30万円程度から可能です。内訳は、渡航費、滞在費、仕入れ費用、国際送料などです。ただし、これはあくまで最低ラインです。安定したビジネスを行うには、検品や在庫管理のための費用も考慮し、余裕を持った資金計画を立てることをお勧めします。

Q: タイ語が話せなくても仕入れは可能ですか?

A: 主要なマーケットでは簡単な英語や電卓での交渉が可能ですが、より良い条件で継続的に仕入れるためにはタイ語が有利です。特に地方の業者や深い関係性を築く上では必須と言えます。信頼できる通訳や現地パートナーを見つけることが成功への近道です。「人と人との関係」を重視するタイの文化を理解することが重要です。

Q: 日本で人気のキャラクター子供服はタイでも売れますか?

A: はい、日本のキャラクターはタイでも非常に人気があり、需要は高いです。ただし、著作権には十分注意が必要です。正規のライセンス品であることを確認し、偽物を扱わないよう気をつけてください。信頼できる業者から仕入れることが最も重要です。

Q: 仕入れに最適な時期はありますか?

A: タイの気候は年間を通して温暖ですが、仕入れを避けるべき時期はあります。例えば、タイの旧正月であるソンクラーン(4月中旬)や年末年始は多くの店が休業するため、避けるのが賢明です。また、雨季(5月〜10月)は商品の運搬や保管に注意が必要です。

まとめ

タイの子供服古着市場は、単なる「穴場」という言葉では片付けられない、確かなポテンシャルを秘めたマーケットです。少子化という課題はありますが、それを上回る中間層の拡大と、子供一人にかける価値観の変化が市場を力強く牽引しています。

しかし、このビジネスで成功を掴むには、表面的な情報だけでは不十分です。現地の文化を理解し、卸業者と「ナムチャイ(思いやり)」の心で信頼関係を築き、現地の親が本当に求めるものを見抜く力が不可欠です。14年間の現地生活で得た私の経験が、皆さんの挑戦を成功に導く「橋渡し」となれば幸いです。クルップ!


執筆者プロフィール
山田雄介(42歳)
アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント
タイ・バンコク在住14年目、元伊藤忠商事、パキスタン駐在経験あり
専門分野:タイ・パキスタン・バングラデシュの古着市場
現地ネットワーク:古着卸業者50社以上との取引関係