【コスト削減術】タイからのコンテナ輸入、費用内訳と3つの交渉ポイント

執筆者:山田雄介(アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント)


サワディークラップ!バンコク在住の山田です。

タイからの古着や雑貨の輸入ビジネス、順調に進んでいますでしょうか。
「思ったより利益が出ない…」と感じている方の多くが、国際輸送費、特にコンテナ輸入のコスト構造を正確に把握できていないケースが少なくありません。

こちらタイでは、政府がインフラ投資を進めていることもあり、物流コスト全体は緩やかに低下傾向にあるという報道もあります。(参考: 【タイ】物流費の対GDP比、13.3%に低下へ=TTB総研
しかし、我々ビジネスの現場では、燃料費の変動や為替レート、そして何より「誰に輸送を依頼するか」で費用が大きく変わるのが実情です。

今回は、14年間のタイ駐在で培った経験を基に、タイからのコンテナ輸入にかかる費用の「リアルな内訳」と、コストを削減するための「3つの交渉ポイント」を、現地の文化的な背景も踏まえながら徹底的に解説します。
この記事を読めば、あなたのビジネスの利益率を改善する具体的なヒントがきっと見つかるはずです。

【この記事の結論】タイ輸入コスト削減 3つの交渉ポイント

ポイント交渉のコツ
① 海上運賃FCLとLCLを貨物量に応じて使い分け、必ず3社以上から相見積もりを取る。
② タイ国内費用見積もりの「諸経費」は内訳を必ず確認し、実費と手数料を分けて提示させる。
③ 納期とサービス価格だけでなく、レスポンスの速さやトラブル対応力を総合的に評価し、長期的なパートナーを選ぶ。

タイからのコンテナ輸入、費用の全体像と詳細な内訳

コンテナ輸入と聞くと、多くの人が「海上運賃」だけをイメージしがちですが、実際には様々な費用が積み重なって最終的なコストとなります。
まずは、その全体像を正確に把握することがコスト削減の第一歩です。

海上運賃だけじゃない!コンテナ輸入にかかる総費用の構成要素

タイから日本へコンテナで商品を輸入する場合、費用は大きく分けて以下の3つで構成されます。

  1. 輸出側(タイ)で発生する費用:
    • タイ国内の陸送費: 商品を保管している倉庫から、バンコク港やレムチャバン港までコンテナを運ぶトラック費用です。
    • 輸出通関料: タイの税関に対して輸出申告を行うための手数料です。
    • ターミナルハンドリングチャージ(THC): 港でコンテナを船に積み込むための作業費用です。
    • その他諸経費: 書類作成費用(B/L発行手数料など)や、フォワーダー(輸送業者)の手数料が含まれます。
  2. 海上輸送にかかる費用:
    • 海上運賃(Ocean Freight): タイの港から日本の港までの基本的な輸送費です。
    • 燃料サーチャージ(BAF/FAF): 原油価格の変動に応じて加算される割増料金です。
    • 為替レート変動調整金(CAF/YAS): 為替レートの変動リスクを吸収するための割増料金です。
  3. 輸入側(日本)で発生する費用:
    • ターミナルハンドリングチャージ(THC): 日本の港でコンテナを船から降ろすための作業費用です。
    • 輸入通関料: 日本の税関に対して輸入申告を行うための手数料です。
    • 関税・消費税: 商品の種類や価格に応じて課税されます。日タイ経済連携協定(JTEPA)などを活用すれば、関税を削減・撤廃できる場合があります。
    • 国内の陸送費: 日本の港から指定の倉庫までコンテナを運ぶトラック費用です。
    • その他諸経費: 書類手数料や倉庫保管料などが含まれます。

これらの費用は、どの業者(フォワーダー)に依頼するか、またどのような契約(インコタームズ)を結ぶかによって、請求の内訳や金額が大きく変わってきます。

【費用内訳表】20ftコンテナ輸入のモデルケース

より具体的にイメージしていただくために、バンコク郊外の倉庫から東京の倉庫まで、20フィートのコンテナ(FCL: Full Container Load)1本を輸送する場合の費用モデルを以下に示します。

前提条件:

  • 輸送区間: タイ・バンコク港 → 日本・東京港
  • コンテナサイズ: 20フィート ドライコンテナ
  • 貨物内容: 古着(関税はEPA適用で無税と仮定)
  • 為替レート: 1ドル = 150円 / 1バーツ = 4.2円
費目分類項目費用(USD)費用(JPY換算)備考
輸出側費用(タイ)タイ国内陸送費$200¥30,000倉庫から港までの距離による
輸出通関料$50¥7,500フォワーダーにより変動
THC (Terminal Handling Charge)$150¥22,500港湾会社が設定
B/L発行手数料など$50¥7,500書類作成費用
海上輸送費用海上運賃 (Ocean Freight)$600¥90,000船会社・時期により大きく変動
燃料・為替サーチャージ$250¥37,500毎月見直しが入る
輸入側費用(日本)THC (Terminal Handling Charge)$250¥37,500日本の港湾レート
輸入通関料¥15,000日本の通関業者手数料
国内陸送費¥40,000港から倉庫までの距離による
消費税商品代金による商品代金+送料+保険料にかかる
合計(概算)$1,550¥287,500 + 消費税あくまで一例

※上記は2025年12月時点の市況を基にした概算です。実際の料金は、利用するフォワーダーや市況によって大きく変動します。

意外な落とし穴?変動費用と追加料金に要注意

見積もりを取る際、特に注意すべきは変動費と、後から発生する可能性のある追加料金です。

  • デマレージ(Demurrage)とディテンション(Detention):
    • デマレージ: 港に到着したコンテナを、規定の無料期間(フリータイム)内に引き取れなかった場合に発生する超過保管料。
    • ディテンション: コンテナを港から引き取った後、規定の無料期間内に空のコンテナを返却できなかった場合に発生する延滞料金。

これらの料金は非常に高額になることがあり、通関手続きの遅れや国内配送のトラブルで簡単に発生してしまいます。
事前にフリータイムの条件をフォワーダーに確認しておくことが重要です。

コスト削減の鍵を握る!フォワーダー選定と3つの交渉ポイント

コンテナ輸入の費用を削減するには、信頼できるフォワーダー(国際輸送をコーディネートする業者)を選び、適切な交渉を行うことが不可欠です。
タイには日系・ローカル含め無数のフォワーダーが存在しますが、大手だから安心、安いから良い、という単純な話ではありません。

ここでは、私が現地で数多くのフォワーダーと取引してきた経験から、具体的な3つの交渉ポイントを解説します。

交渉ポイント1:海上運賃(Ocean Freight)-「FCL」と「LCL」の使い分けが肝心

海上運賃はコストの大部分を占めるため、最も重要な交渉ポイントです。

FCL (Full Container Load): 1つのコンテナを1荷主が貸し切って輸送する方法。物量が多い場合に単位あたりのコストが安くなります。
LCL (Less than Container Load): 1つのコンテナを複数の荷主でシェア(混載)する方法。物量が少ない場合に適していますが、FCLに比べて割高になり、貨物の積み替えなどでダメージのリスクが若干高まります。

【交渉のコツ】

  • 物量に応じた最適な選択: まず自社の貨物量がFCLとLCLのどちらに適しているかを見極めることが重要です。コンテナ容量の半分以上を埋める物量があるなら、FCLでの輸送を検討しましょう。
  • 複数社からの相見積もり: 海上運賃は船会社やフォワーダーの仕入れ力によって大きく異なります。必ず3社以上から見積もりを取り、料金を比較検討してください。
  • 閑散期の利用: 海上輸送には繁忙期と閑散期があります。タイの大型連休(ソンクランなど)前後や、日本の年末商戦前は運賃が高騰しがちです。可能であれば、輸送時期を調整することでコストを抑えられます。

交渉ポイント2:タイ国内費用(Local Charge)- 見積もりの「諸経費」を疑え

意外と見落としがちなのが、タイ側で発生する国内費用です。
特にローカルのフォワーダーの見積もりでは、「諸経費(Surcharge)」や「手数料(Handling Fee)」といった曖昧な項目で、不透明な費用が上乗せされていることがあります。

【交渉のコツ】

  • 費用の詳細な内訳を要求する: 見積もりを受け取ったら、「諸経費」や「手数料」に具体的に何が含まれているのか、詳細な内訳を必ず確認しましょう。
  • 実費と手数料の分離: 例えば、通関料であれば「税関に支払う実費」と「フォワーダーの手数料」を分けて提示してもらうように交渉します。これにより、どこに交渉の余地があるかが見えてきます。
  • 現地でのネットワークをアピール: 「他の業者にも見積もりを依頼している」「現地の事情には詳しい」といった姿勢を見せることで、不当な上乗せを防ぐ牽制になります。

交渉ポイント3:納期とサービスレベル -「安かろう悪かろう」を避けるための交渉術

コスト削減を追求するあまり、サービスの質を落としてしまっては本末転倒です。
特にタイでは、担当者の対応の速さやトラブル時の解決能力が、ビジネスの成否を大きく左右します。

【交渉のコツ】

  • レスポンスの速さを確認する: 見積もり依頼や質問に対する返信の速さ、内容の的確さは、その会社のサービスレベルを測る重要な指標です。日本語が話せるタイ人スタッフがいるか、日本人の担当者がいるかも確認しましょう。
  • トラブル時の対応策を事前に確認: 「通関でトラブルが起きた場合、どのような対応をしてくれるのか?」「貨物にダメージがあった場合の保険や補償はどうなっているか?」など、具体的なケースを想定して質問し、明確な回答を得られるかを確認します。
  • 価格だけでなく総合力で判断: 単純な価格の安さだけでなく、担当者とのコミュニケーションの取りやすさ、提案力、トラブル対応能力などを総合的に評価し、長期的なパートナーとして信頼できるフォワーダーを選ぶことが、結果的に最大のコスト削減に繋がります。

タイのビジネス文化を理解する:交渉を有利に進めるための「ナムチャイ」アプローチ

タイでのビジネス、特に価格交渉において、日本と同じ感覚でロジックや効率だけを追求すると、思わぬ壁にぶつかることがあります。
14年間こちらでビジネスをしてきて痛感するのは、タイの人々との信頼関係こそが、最終的に交渉を有利に進める鍵だということです。

なぜタイでは人間関係が重要なのか?

タイのビジネス文化の根底には、「クレインチャイ(遠慮・気兼ね)」や「ナムチャイ(思いやり・情け)」といった考え方があります。
彼らはビジネスの相手を、単なる取引先としてではなく、個人的な関係性を築ける相手かどうかを見ています。

私が伊藤忠商事にいた頃、ある大手物流会社の担当者と交渉した時のことです。
最初の商談では、価格も条件も平行線でした。しかし、その後も食事を共にし、彼の家族の話を聞き、時には仕事以外の相談に乗るうちに、彼との間に個人的な信頼関係が生まれました。
ある日、彼の方から「山田さんのためなら、もう少し本社と掛け合ってみますよ」と言ってくれ、最終的には当初の提示額から大幅なディスカウントを引き出すことができたのです。

これは特別な例ではありません。タイでは、こうした人間関係がビジネスの潤滑油となり、時には契約条件をも動かす力を持つのです。

「マイペンライ」の裏にある本音と建前

タイ人と話していると、「マイペンライ(大丈夫、気にしない)」という言葉をよく耳にします。
これは彼らの楽天的な国民性を表す言葉ですが、ビジネスの場では注意が必要です。

引用: タイは、言葉以外の文脈が重要になる「ハイコンテクスト文化」です。笑顔でも目が泳いでいたり、相槌が上の空だったり、声のトーンが一定で感情がこもっていなかったりする場合は、建前である可能性が高いです。

彼らの「マイペンライ」は、必ずしも「問題ない」という意味ではありません。
時には「これ以上、あなたと対立したくない」「面倒な話は避けたい」という本音の裏返しであることも多いのです。
この言葉が出たときは、相手の表情や声のトーンを注意深く観察し、何か問題が隠れていないかを探る必要があります。

長期的な信頼関係が最大のコスト削減につながる

短期的な利益を求めて強引な価格交渉を仕掛けることは、タイでは逆効果になることが多いです。
特に、人前で相手のメンツを潰すような行為は絶対に避けなければなりません。

一度「この日本人は自分たちのことを尊重してくれない」と思われてしまうと、その後の取引で協力は得られにくくなります。
逆に、時間をかけて相手を尊重し、「ナムチャイ」の心を持って接することで築いた信頼関係は、非常に強固なものになります。

信頼できるパートナーになれれば、彼らは価格面だけでなく、急なトラブルが発生した際に親身になって助けてくれたり、有益な情報を提供してくれたりします。
こうした目に見えないサポートこそが、長期的に見れば最大のコスト削減につながるのです。

今後の展望とまとめ:2026年に向けたタイ輸入ビジネスの注意点

サワディークラップ!バンコクから山田でした。

今回は、タイからのコンテナ輸入における費用内訳と、具体的なコスト削減の交渉術について、現地の文化的な背景を交えながら解説しました。

タイ政府は東部経済回廊(EEC)開発などを通じて物流インフラの強化を進めており、今後も物流市場の成長が見込まれています。 これにより、長期的には輸送の効率化やコストの安定化が期待できるでしょう。
しかし、一方で燃料価格の動向や世界経済の不確実性など、コストを押し上げる要因も常に存在します。

このような状況で利益を確保し続けるためには、目先の運賃だけでなく、以下の3つの視点を持つことが重要です。

  1. 費用の透明性を確保する: 見積もりの内訳を詳細に確認し、不透明な費用をなくす。
  2. 信頼できるパートナーを見つける: 価格だけでなく、サービスレベルやトラブル対応能力を総合的に評価し、長期的な関係を築けるフォワーダーを選ぶ。
  3. 現地の文化を理解し、尊重する: 「ナムチャイ」の心を持って相手と接し、人間関係を構築することが、最終的に有利な条件を引き出す鍵となる。

タイからの輸入ビジネスは、正しい知識とアプローチがあれば、まだまだ大きな可能性があります。
この記事が、皆さんのビジネスのコスト構造を見直し、利益を最大化するための一助となれば幸いです。


執筆者プロフィール
山田雄介(42歳)
アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント
タイ・バンコク在住14年目、元伊藤忠商事、パキスタン駐在経験あり
専門分野:タイ・パキスタン・バングラデシュの古着市場
現地ネットワーク:古着卸業者50社以上との取引関係