アジアの古着展示会・見本市カレンダー2026:現地で人脈を広げるための参加ガイド

執筆者:山田雄介(アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント)


サワディークラップ!バンコクから山田雄介です。タイに移り住んで14年、伊藤忠商事の駐在員時代からアジアの繊維・アパレル市場に携わり、現在はフリーランスの貿易コンサルタントとして、古着を含むアパレル分野の市場調査やビジネスマッチングを行っています。

「アジアで古着ビジネスを始めたい」「仕入れ先を開拓したい」「でも、どこから手を付けていいかわからない」。こうした声を、日本のバイヤーさんから本当によく聞きます。ネットで情報を集めるのもいいのですが、私が14年間の現地経験で確信しているのは、展示会や見本市に足を運んで「顔を合わせること」の圧倒的な重要性です。

この記事では、2026年にアジア各地で開催される展示会・見本市のスケジュールを一覧でまとめました。加えて、現地で人脈を効率よく広げるための実践的なノウハウもお伝えします。私自身の失敗談や成功体験も交えながら書いていきますので、参考にしていただけたら嬉しいです。

なぜ古着ビジネスに展示会参加が欠かせないのか

オンラインだけでは見えない「現地の温度感」

古着ビジネスにおいて、オンラインの情報だけで仕入れ先を判断するのはリスクが高いです。理由は単純で、古着は一点もの。品質のバラつきが大きく、写真と実物のギャップも起こりやすい。

私がバンコクのチャトゥチャック市場で取引を重ねてきた経験上、優良な卸業者を見極めるには、実際に商品を手に取り、倉庫の管理状態を見て、担当者の対応を肌で感じる必要があります。展示会は、それを短期間で効率よくできる場所です。

1回の展示会で数十社と名刺交換し、サンプルを確認し、価格帯を比較する。これだけの作業をオンラインでやろうとすると数カ月かかります。展示会なら2〜3日。コストパフォーマンスの面でも圧倒的に有利です。

信頼関係の構築はリアルな場でしか始まらない

アジアのビジネスは「人と人との関係」が土台になります。タイでは「ナムチャイ」(思いやりの心)、パキスタンでは「メフマーン・ナワーズィー」(もてなしの精神)という言葉があるように、どちらの文化でも、まず相手を知り、信頼を育てることがビジネスの出発点です。

メールやビデオ通話では、どうしてもこの「信頼の芽」が育ちにくい。一方で、展示会で顔を合わせ、食事を共にし、相手の文化を尊重する姿勢を見せると、驚くほど早く関係が深まります。私自身、パキスタン・カラチの駐在時代に、展示会後の食事会がきっかけで始まった取引が、今でも最も安定した仕入れ先の一つになっています。

2026年アジアの主要展示会・見本市カレンダー

ここからは、2026年にアジア各国で開催される主要な展示会を時系列で紹介します。古着に直接関連するイベントから、テキスタイル・アパレル全般をカバーする大型展示会まで幅広くピックアップしました。「古着専門」の展示会はまだ数が限られていますが、テキスタイル系の展示会にも中古衣料の卸業者やリサイクル関連企業が出展するケースが増えています。

前半(2月〜6月)の注目イベント

開催時期イベント名開催地規模・特徴
2月5-8日DTG Bangladeshダッカ(ICCB)第20回。バングラデシュ最大のテキスタイル機械展。繊維産業の技術動向を把握できる
2月26-28日VIATTホーチミン(SECC)460社出展、21カ国参加。ベトナムのアパレル産業の全体像が一望できる
4月8-10日FaW TOKYO Spring東京ビッグサイト700社出展、20カ国。REUSE BUSINESS EXPO併設で古着・リユース専門の商談が可能
4月16-18日TEXPO PakistanカラチエキスポセンターTDAP主催。パキスタンの繊維・レザー産業を一度に把握できる
4月29日-5月2日BTKG Bangladeshダッカ(ICCB)900社・30カ国が参加する大型展。BKMEA共催でニットウェアに強い
5月1-5日Canton Fair Phase 3(春季)広州パジョウ世界最大級の貿易展。テキスタイル・衣料品セクションは第3フェーズ
6月3-5日Asia Sourcing Showバンコク(IMPACT)600社出展。アジアのアパレルソーシング専門の国際展
6月23-25日IATF Dubaiドバイ(DWTC)425社以上。中東・アフリカ向け輸出を視野に入れるなら必見。入場無料

後半(7月〜12月)の注目イベント

開催時期イベント名開催地規模・特徴
7月1-4日GFT Bangkokバンコク(BITEC)第26回。ASEAN最大のガーメント製造技術展。10,000人以上来場
7月14-17日Bharat Texニューデリー(Pragati Maidan)インド最大級。3,500社出展、140カ国からバイヤーが集まる
7月(日程未定)Textile Asia Lahoreラホールエキスポセンター480社出展。パキスタン内陸部の繊維産業へのアクセスポイント
8月13-16日CTG Cambodiaプノンペン(Diamond Island CC)第10回。カンボジアの縫製産業の動向を掴める
10月31日-11月4日Canton Fair Phase 3(秋季)広州パジョウ春季と合わせて年2回。秋季はテキスタイル分野がPhase 2-3に分散
12月5-7日Textile Asia Karachiカラチエキスポセンター320社出展。カラチの繊維クラスターに直接アクセスできる
12月15-18日MTG Myanmarヤンゴンコンベンションセンターミャンマーのテキスタイル産業を知る数少ない国際展

古着バイヤーが特に注目すべき3つのイベント

数あるイベントの中から、古着ビジネスに携わる方に特にお勧めしたい3つを詳しく解説します。

FaW TOKYO「REUSE BUSINESS EXPO」─ アジア唯一のリユース専門展

FaW TOKYO(ファッション ワールド東京)は、日本最大級のファッション総合展示会です。2025年秋にスタートした「REUSE BUSINESS EXPO」が2026年4月の春季展でも開催され、古着・リユース分野に特化した商談の場として注目を集めています。

ここが面白いのは、単なる古着の売り買いにとどまらない点です。デジタルマーケットプレイス、AI鑑定技術、クラウド型流通システム、リペア・アップサイクル技術など、リユースビジネスのインフラとなるソリューションが一堂に集まります。

古着ビジネスを「仕入れて売る」だけでなく、テクノロジーを活用した次のステージに進めたい方にとって、国内で最も効率よく情報収集できる場です。東京で開催されるため、海外渡航のハードルもありません。

Asia Sourcing Show Bangkok ─ 東南アジアのアパレルソーシングのハブ

私が住むバンコクで6月に開催されるAsia Sourcing Showは、東南アジアのアパレルソーシングに特化した国際展示会です。ASEAN Federation of Textile Industries(AFTEX)が共催しており、タイ、バングラデシュ、ベトナム、カンボジアなど、主要な繊維生産国のメーカーが600社以上出展します。

古着ビジネスとの関連で言うと、ここでは「新品の製造元」と直接つながれます。なぜそれが古着に関係するのか。答えは、現地の繊維産業のネットワークを理解することで、中古衣料の流通ルートや品質の目利き力が格段に上がるからです。

会場であるIMPACTはバンコク中心部からタクシーで30〜40分。周辺にはムアントンタニの宿泊施設もあり、コスト面でもバンコク都心よりずっとリーズナブルです。

TEXPO Pakistan ─ 中古衣料の巨大集積地を知る窓口

パキスタンは中古衣料の世界的な集積地の一つ。カラチのシェリシャー市場やラホールのアナルカリバザールには、世界中から中古衣料が集まり、選別・再流通されています。

TEXPO Pakistanは、パキスタン貿易開発庁(TDAP)が主催する国際テキスタイル・レザー展で、2026年は4月16-18日にカラチエキスポセンターで開催されます。前回は250社以上が出展し、57カ国からのバイヤーが参加。会場内でのB2Bマッチングに加え、工場見学プログラムも組まれており、パキスタンの繊維・衣料産業の現場を体感できます。

私がカラチに駐在していた2015年〜2017年頃と比べると、パキスタンの展示会の質は大きく向上しています。英語対応もスムーズになり、日本人バイヤーにとっての参加ハードルはかなり下がりました。ただし、治安情報は必ず事前にチェックしてください。外務省の海外安全ホームページで最新の渡航情報を確認することをお勧めします。

展示会で人脈を広げるための事前準備

展示会に「ただ行くだけ」では、時間とお金の無駄になりかねません。私がこれまで100回以上の展示会に参加してきた経験から、事前準備で最も重要なポイントを3つに絞ってお伝えします。

出展者リストの徹底リサーチ

ほとんどの展示会は、開催の1〜2カ月前に公式サイトで出展者リストを公開します。これを事前にダウンロードし、以下の基準でターゲットを絞り込んでおきましょう。

  • 自分が扱いたい商品カテゴリ(ヴィンテージデニム、USAブランド古着、ユーロ古着など)との関連性
  • 過去の展示会での評判(SNSやフォーラムで検索)
  • 取引条件(最低ロット、価格帯、輸出対応の有無)

私は毎回、出展者リストをスプレッドシートに整理して、「必ず訪問」「時間があれば訪問」「情報収集のみ」の3段階に分類しています。これだけで、会場での動き方がまったく変わります。

名刺・会社紹介資料の現地語対応

英語の名刺だけでも通じますが、現地語を併記した名刺は驚くほど効果的です。タイ語、ウルドゥー語(パキスタン)、ベトナム語など、裏面に現地語を入れるだけで「この人は私たちの国に敬意を持っている」と受け取ってもらえます。

翻訳は現地の知人に頼むか、翻訳サービスを使えばOK。コストは数千円程度。この投資のリターンは計り知れません。

会社紹介資料も、A4一枚程度のシンプルなものを英語と現地語で用意しておくと、商談がスムーズに進みます。

事前アポイントの取り方

展示会の公式サイトには、たいていオンラインのマッチングプラットフォームやアポイント予約機能が用意されています。Asia Sourcing ShowやBharat Texなどの大型展示会は、この仕組みが特に充実しています。

事前アポがあるのとないのとでは、商談の質がまったく違います。アポなしで飛び込むと、ブースの担当者は「冷やかし」なのか「本気のバイヤー」なのか判断できません。事前に「〇〇に興味があり、△△の条件で話を聞きたい」と伝えておけば、向こうも準備をした状態で迎えてくれます。

現地で差がつくネットワーキング術

初対面で信頼を得る5つのコツ

展示会で初めて会う相手に、短時間で信頼を得るためのポイントをまとめます。

  • 相手の文化圏の挨拶を一つ覚えて使う。タイなら「サワディークラップ」とワイ(合掌のお辞儀)、パキスタンなら「アッサラーム・アライクム」。たったこれだけで場の空気が和みます
  • 自分のビジネスを30秒以内で説明できる「エレベーターピッチ」を準備する。何を探していて、どんな条件で取引したいのかを端的に伝えましょう
  • 相手の商品に対して具体的な質問をする。「良い商品ですね」ではなく「この素材の調達先はどこですか」「ロット200kgの場合、リードタイムはどのくらいですか」と踏み込むと、本気度が伝わります
  • サンプルを持参する。自分が現在扱っている商品のサンプルを見せると、「何を求めているか」が一目で伝わり、話が格段に早く進みます
  • 名刺交換の際、相手の名刺を両手で丁寧に受け取り、一度目を通す。これはアジアのどの国でも共通する礼儀です

展示会後のフォローアップが勝負を分ける

展示会で名刺を交換しても、フォローアップをしなければ意味がありません。私が実践しているルールは「48時間ルール」。展示会から48時間以内に、お礼のメッセージを送ります。

ポイントは、ただの定型文ではなく「ブースで見せていただいた〇〇のサンプルが印象的でした」「△△の条件について改めて相談させてください」と、具体的な内容を含めること。相手に「ああ、あのブースで話した人だ」と思い出してもらう必要があります。

東南アジアの場合、メールよりもWhatsAppやLINEでのやりとりが主流です。パキスタンでもWhatsAppがビジネスの標準ツールになっています。メッセージアプリでつながっておくと、その後の連絡がスムーズに進みます。

国・地域別の文化的マナーと注意点

展示会では多国籍の出展者と接します。文化的な配慮を欠くと、せっかくの商談チャンスを逃すことになりかねません。

タイ ─ 「マイペンライ」の裏にある繊細さ

タイの人は穏やかで「マイペンライ」(大丈夫、気にしない)をよく口にしますが、これは「何でも許容する」という意味ではありません。実は繊細な感情を持った人が多く、相手のメンツを潰す行為には非常に敏感です。

  • 人前で相手の間違いを指摘しない
  • 頭を触らない(タイでは頭は神聖な部位)
  • 仏教の祭日や王室関連の行事の日は、ビジネスの話を控えめにする
  • 足の裏を相手に向けない

タイでのビジネスは、急がないこと。焦って結論を求めると、相手は笑顔のまま距離を置きます。「ゆっくり関係を育てる」のがタイ流です。

パキスタン ─ 宗教・文化を尊重した接し方

パキスタンはイスラム教国です。ビジネスの場でも宗教的な配慮が求められます。

  • 左手は不浄とされるため、名刺や物の受け渡しは右手で
  • ラマダン(断食月)の時期は、相手の前での飲食を控える
  • 金曜の礼拝時間帯(正午前後)はアポイントを入れない
  • 相手が「インシャーアッラー」(神の意志により)と言ったら、「確約ではないが前向き」のニュアンスです。催促はせず、後日改めて確認する

私がカラチ駐在中に学んだ最大の教訓は、「時間の感覚が日本とは違う」ということ。約束の時間に30分遅れても、それは失礼ではなく「普通」です。イライラせず、お茶でも飲みながら待つ姿勢が大事です。

中国・ベトナム・バングラデシュ ─ 各国のビジネス慣習

中国(広州・Canton Fair)では、商談のスピード感が求められます。価格交渉はストレートに行い、その場で条件を詰めるのが一般的。名刺よりWeChat(微信)の交換が優先されることも多いです。

ベトナム(VIATT)では、近年の急速な経済発展を反映して、若い経営者が増えています。英語が通じる場面も多く、比較的スムーズにコミュニケーションが取れます。ただし、政府規制に関する話題は避けたほうが無難です。

バングラデシュ(DTG、BTKG)は、世界第2位のアパレル輸出国。BGMEA(バングラデシュ縫製品製造業者・輸出業者協会)の公式サイトで最新の業界動向を事前にチェックしておくと、現地での商談に深みが出ます。ダッカの交通渋滞は想像を超えるレベルなので、移動時間は通常の2〜3倍を見積もってください。

展示会参加の実践チェックリスト

最後に、展示会参加の際に私が毎回使っているチェックリストを共有します。

タイミングチェック項目
出発2カ月前展示会の公式サイトで来場者登録を済ませる
出発2カ月前出展者リストをダウンロードし、ターゲット企業をリスト化する
出発1カ月前ターゲット企業に事前アポイントのメッセージを送る
出発1カ月前現地語併記の名刺を発注する(200枚程度)
出発2週間前会社紹介資料(英語+現地語)を準備する
出発2週間前持参するサンプル品を選定・梱包する
出発1週間前現地の祝日・宗教行事のスケジュールを確認する
出発1週間前外務省の海外安全情報を確認する
会場初日インフォメーションカウンターで会場マップと最新の出展者リストを入手する
会場内商談メモは写真付きでその場で記録する(後で必ず混乱する)
会場内気になったサンプルはその場で価格・条件をメモする
帰国後48時間以内お礼メッセージを全商談先に送る
帰国後1週間以内有望な取引先に具体的な条件提示のメールを送る
帰国後1カ月以内サンプル発注・試験取引を開始する

まとめ

アジアの古着・テキスタイル関連展示会は、年間を通じて途切れることなく開催されています。2026年も、2月のダッカから12月のヤンゴンまで、毎月どこかで商談の機会があります。

大切なのは、「とりあえず行ってみる」のではなく、事前にしっかり準備をして、目的を持って参加すること。そして、現地の文化を尊重し、相手との関係を長期的に育てていく姿勢を忘れないことです。

私がバンコクに来た14年前は、展示会の情報すら満足に手に入りませんでした。今はオンラインで出展者リストをチェックし、事前にアポを取り、翻訳アプリで現地語の名刺も簡単に作れます。環境はずいぶん良くなりました。

あとは、あなたが一歩を踏み出すだけ。展示会で「サワディークラップ」と笑顔で声をかけてきた日本人バイヤーがいたら、それは私かもしれません。会場でお会いできるのを楽しみにしています。


執筆者プロフィール
山田雄介(42歳)
アジア古着市場アナリスト・貿易コンサルタント
タイ・バンコク在住14年目、元伊藤忠商事、パキスタン駐在経験あり
専門分野:タイ・パキスタン・バングラデシュの古着市場
現地ネットワーク:古着卸業者50社以上との取引関係